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ネムリヒメ.
第24章 Get back.
「…真面目な用件を言え」
とにかく時間がない
「…むしろそれ以外喋んな」
それ以上ふざけてオンナの鳴き声聞かせやがったらわかってんだろうな…
「じゃねぇと、てめぇも…」
『渚くん!!』
「ッ…!?」
葵にもれなく東京湾行きを宣告しかけたところで、電話越しに耳に届いた声に渚は耳を疑った
『今どこ?』
「っ聖!?」
なんでこいつが…
なぜか葵の電話から聞こえてくるのは聖の声だ
『はぁ…はぁ…ッ…とにかくすぐ部屋に戻って!!』
「は…!?」
しかも息を切らせ、切羽詰まった声で部屋に戻れと言っている
部屋になんて誰もいるはずがないのに!?
一瞬、状況がのみ込めなかった
しかし、次の聖のひと言に渚は弾かれたようにハッとして息を飲んだ
『郁くんッ…』
「っ……!!」
『郁くんにやられた!!出し抜かれたんだ』
渚はすぐに返事ができなかった
聖が口にしたのは覚えのあるオトコの名前だった
その名前に頭のなかが真っ白になる
頭が真っ白で、正直、聖の言っているコトの意味の半分がまだ理解しきれていない
しかし、その隙間を瞬く間に嫌な予感が浸食して、思い起こされるのはあの夜だ…
真っ暗になった頭のなかで、不安が確信に変わっていく
『詳しい話は後だよ。とにかくすぐに部屋に戻って!!じゃないと、ッ…ちーちゃんが…』
「ッ…!!」
"ちーちゃんはきっと郁くんとそこにいる…"