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ネムリヒメ.
第24章 Get back.
どうして気付かなかったんだろう
どうしてもっと早くっ…!!
そう確信を突く聖の声も半ば、返事をする間もなく渚は踵を返していた
もちろん目指す先は客室の最上階、フロアほぼぶち抜きのスイート
人混みのなかを足早に駆け、エレベーターを待つ渚の頭のなかは焦りと後悔とでいっぱいだった
千隼と郁…
郁というオトコが千隼に接触したら何が起こるかなんてあの夜を知る者には誰にでも容易く想像ができる事だった
だから渚は千隼が姿を消した後で郁に電話をかけた
のち、その電話は銃声を最後に途絶えてしまうことになるのだが…
郁は仕事でとり込み中だと言っていた
確かにそれに関しては充分にあり得る話ではあった
しかしヤツのことだ、話半分の可能性もあった
そこらへんの汚いオトナよりよっぽど趣味もたちも悪いのが郁というオトコだ
故に渚は聖に郁の動向を探らせたのだが…
"郁くんにやられた!!出し抜かれたんだ"
息を切らせ、余裕のない聖の声が頭のなかでリフレインする
どうしてもっと早くヤツがここに来ている可能性を考えなかったのだろか…
自分がヤツと話した時、すでに彼女がそこにいたのだとしたら…
「チッ…」
気づいてやれなかったのか
それ以前に…
部屋から飛び出していく彼女を止めることができなかった
睫毛を濡らした彼女をひとりにしてしまった
胸に沸くのは後悔ばかりだ
ぶつけようがない苛立ちに奥歯をギュッと噛み締める