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ネムリヒメ.
第24章 Get back.
それからようやく上から降りてきたエレベーターの扉が開いてきらびやかなフロアへと着飾った人々が散っていくのを渚は見送った
─長かった。
エレベーターを待つ些細な時間でさえも苦痛で仕方がなかった
いつもなら多忙で時間があっという間に過ぎていくというのに、こんなにも時間が経つのが遅いと感じたことがあっただろうか
渚は同じくエレベーターを待っていた他の客を先になかへ乗せ、自分もその箱のなかへ足を踏み入れる
…その時だった
「紫堂くんっ!!」
そんな声が渚の背中を呼び止める
ッ……
最悪のタイミング…
その声に出掛かった足がエレベーターの床を踏むことはなかった
ゆっくりと後ろを振り返る渚の瞳の端に、エレベーターの閉まる扉が映り込む
「久しぶりじゃないか、元気かね」
「………!!」
目線を上げた先にいた人物が、思わず目を見張った渚の肩を親しげに叩いた
「相変わらずよくやってるね、倅も世話になって」
「っ…知事」
「ハッハッハ、そんな呼び方やめたまえ。いつでも"お義父さん"と呼んでくれて構わないだよ」
「…もう、パパったら」
渚に親しげに話しかけ笑い声をあげる少々恰幅の良いこの男性…
そう、彼は渚が口にした通り現職の東京都知事であった
「もうっ、ほらぁ…急に来たりするから紫堂さんがビックリなさってるでしょ」
その隣には若い女性の姿がある