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ネムリヒメ.
第24章  Get back.







歳の頃は千隼と同じくらいだろうか

白とピンクの淡い春色のドレスに身を包み、ハーフアップにしたダークブラウンの髪を揺らしながら控えめに微笑む彼女

嫌みのない品に、華やかな顔だが清楚という言葉がよく似合う

都知事の半歩後ろに控えるその風貌はどこから見ても、THE・お嬢様…

それは渚もよく知る都知事の一人娘だった


「知事、お見えになるのでしたら仰って頂ければそれなりのご用意も致しましたのに…申し訳ありません」


ゆったり頬笑む彼女に軽く笑顔を返し、親しみのある穏やかな表情で知事に頭を下げる渚

無論この振る舞いは、内心穏やかさの欠片などひとつもないがここを背負って立つ彼の立場上、致し方ないのが悲しい性


「いいんだ、気にしないでくれ。今夜はプライベートだ。君も忙しいだろう、私のことはほっといてくれて構わんよ。

それよりも"お義父さん"だよ、紫堂くん。いつになったらそう呼んでくれるんだね」

「っ……!」


再び肩を叩かれ言葉を詰まらせる渚

横に目をやれば父親の言葉に娘が頬を赤らめるている


「なにを照れているんだ、お前も紫堂くんに会いたがっていただろう」

「パパッ…!!」


父親に背中を押され、渚の顔を見るなりぶつかった視線に彼女の頬が更に赤みを増す


「さ、若者は若者同士で楽しむのが一番だ。邪魔者はさっさと消えようかね」


"任せたよ、紫堂くん…"


「………」


娘を残し踵を返す父親の姿に渚は硬い笑顔を返すことしかできなかった

そんな渚に向かって赤い頬のまま彼女はにっこりと微笑む


「…こんばんは、紫堂さん」


雑踏の声が遠くに聞こえた






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