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淫らデッサンに疼く人妻
第3章 近崎絵画教室
「そして、これが最も重要な注意事項なのですが……いったん、スケジュールが確定し、モデル台登壇日が決まりますと、いかなる理由がございましてもキャンセルできません。概ね、1週間前くらいにはスケジュールが確定するのですが、そうなってしまうと、その日に代わりのモデルさんをお連れしてくるのは時間的にも不可能ですし、モデルさんがキャンセルされてしまうと、描き手さんに多大なるご迷惑をおかけすることになるからです。当日、多少体調不良でいらっしゃる場合には、先ほどご説明いたしました措置をとらせていただくことは可能ですが……くれぐれも、当日の体調にはお気をつけくださいね。また、もしモデル中にお加減が悪くなられた場合も、当教室としては一切の責任を負いかねます。そのこともお気をつけください」
 近崎が重々しく説明したところで、美雪が口を挟んだ。
「所長~、話が重いですよ……。せっかく茜が少~し興味を持って、話を聞きに来てくれてるのに、これじゃモチベーション下がって、『やっぱ、なんか無理そう』ってなりかねないじゃん! いつも説明がこんな感じだから、新たなモデルさん探しに苦労してて、モデルさん不足がいつまで経っても解消されないんでしょ!」
 口を尖らす美雪。
「ははは、それもそうかも」
 近崎の表情は柔らかくなった。
「でもまぁ、一応大事なことですから。ただ、美雪さんのおっしゃることもまた正しくて、実際そんな風に、モデル中に体調不良となられた方は今までいらっしゃいませんし、キャンセルされたケースも一度もございません」
「そうそう、そのことを先に説明しないと!」
 美雪はなぜか、ドヤ顔で、腕組みしている。
「なんで、美雪が得意げなのかな~」
 茜が突っ込むと、美雪は朗らかに笑って「だって、所長から一本取ったし」と言う。
「ははは、たしかに美雪さんには一本取られましたね。今後、気をつけますよ」
 否定もせず、明るい口調で言う近崎。
 茜は、「近崎所長っていい人そうだな」と思い始めていた。


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