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そして、花開く
第9章 ~ 8 ~
何か心配して損した、とぶつくさ文句を言っている清貴に苦笑いしながら、玄関を出る。
部屋から数メーター先にあるエレベーターまで行くと、清貴はもう何も話さず無言で下へのボタンを押した。
『清?』
エレベーターを待っている間に、声を掛ける。
清貴は前を向いたまま、静かに息を吐いた。
『安心した。本当に』
『何が』
『先輩とお前に決まってるだろ』
振り返り、じろりと聡を睨む。
『どういう意味だよ』
清貴に声を掛けた時、チンと小さな音が鳴り、エレベーターが到着した。
中で話を聞こうとしたが、先客がいて話は中断となり、そのまま無言でエントランスまで降りる。
聡は清貴の言いたいことを、考えあぐねていた。
本来なら言いたいことは、相手が大樹でも構わずに言う清貴だ。
なのに間接的にしか言わないのは、どういう意味なのか。
先客がエントランスを出ていき、聡と清貴だけになる。
数歩先を歩いていた清貴が振り返った。