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そして、花開く
第2章 ~ 1 ~
『ありがとう。そんな風に思って貰えるのは、凄く嬉しい』
席を立ちながら、お茶の準備をする。
パンダのカップと、有名なウサギの絵のカップに、インスタントのアップルティーを淹れた。
『凄く嬉しいんだけど、松田さんにはもっといい人が現れると思うんだ。今はまだ若いし、一番近くにいるのが俺だから、そんな風に思えるんだと思う』
『そんな事っ!』
差し出されたカップを受け取りながら、愛花が聡を仰ぎ見る。
『それに、………ごめんね。俺、誰とも付き合う気無いんだ』
これが一番伝えなければいけない事だ。
席について、カップ中の茶色い液体を見詰める。
愛花から、『分かりました、すみませんでした』という小さな声が聞こえた。
一瞬、静かな空気が流れる。
しかし、それは来客を知らせるチャイムによって、かき消されたのだった。