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そして、花開く
第5章 ~ 4 ~


それを見て頬杖をついて聡を見ていた大樹が、表情一つ変えずにポツリと呟いた。


『完璧な営業スマイルが出来る所も、そんな素の表情も、俺は好きだけどな。ただプライベートでは不器用ってだけだろ』
『ちょっと……。大樹さん、これ以上からかわないで下さい』


顔をパタパタと扇ぎながら、聡がキッパリというと、大樹は小さく肩を竦めた。


『冗談じゃあ、無いんだけどな』
『もう良いですってば!』


無愛想なまま冗談を言うから、笑えない。

その後、しばらく大樹と話をしたが、いつの間にか、大樹に対して気負うことなく話が出来ていた。

驚く程、楽しい時間だった。
だから初めて別れ際に、連絡先を交換してください、と頭を下げた。

一瞬驚いた様な顔をしていたが、またいつもの無愛想に戻った大樹は、聡の髪をクシャリと撫でてから、アドレスと電話番号の入った名刺をくれた。

(兄弟って、こんな感じなのかな…)

聡はこれから美容室に顔を出すと言って、背を向けた大樹を見送りながら、名刺をしっかりと握りしめていたのだった。

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