この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
そして、花開く
第5章 ~ 4 ~
それを見て頬杖をついて聡を見ていた大樹が、表情一つ変えずにポツリと呟いた。
『完璧な営業スマイルが出来る所も、そんな素の表情も、俺は好きだけどな。ただプライベートでは不器用ってだけだろ』
『ちょっと……。大樹さん、これ以上からかわないで下さい』
顔をパタパタと扇ぎながら、聡がキッパリというと、大樹は小さく肩を竦めた。
『冗談じゃあ、無いんだけどな』
『もう良いですってば!』
無愛想なまま冗談を言うから、笑えない。
その後、しばらく大樹と話をしたが、いつの間にか、大樹に対して気負うことなく話が出来ていた。
驚く程、楽しい時間だった。
だから初めて別れ際に、連絡先を交換してください、と頭を下げた。
一瞬驚いた様な顔をしていたが、またいつもの無愛想に戻った大樹は、聡の髪をクシャリと撫でてから、アドレスと電話番号の入った名刺をくれた。
(兄弟って、こんな感じなのかな…)
聡はこれから美容室に顔を出すと言って、背を向けた大樹を見送りながら、名刺をしっかりと握りしめていたのだった。