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そして、花開く
第5章 ~ 4 ~

空のカップを見つめる。

『俺、本当は苦手なんです。人と接するのが。だから、お客さんに対して線引きをしてしまう。見る人が見れば、俺はただ愛想笑いが上手くなっただけです』

誰にも話した事のない事だった。
先日の葉嶋の言葉が、耳の中でリフレインしている。
吐き出すように、気付けば呟いていた。


『良いんじゃないか?』
『え?』
『別に客は町田の接客スキルを見に来てる訳じゃないだろ』
『それは、…そうですけど』
『人と接するのが苦手でも、仕事では完璧な営業スマイルで円滑に店内業務が出来て、尚且つお客さんからはノークレーム。店員の鏡じゃないか』


何を言ってるんだ?とでも言わんばかりの表情の大樹の言葉に驚かされる。

理解するまでに少し時間が掛かったが、自分が褒められているのだ、と知り聡の顔はあっという間に真っ赤になった。

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