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そして、花開く
第6章 ~ 5 ~
結局、濡れた床を傍にあったティッシュで拭いてくれたのは、自分の失態を笑いもせず冷静に対処してくれた大樹だった。
『ちょっと冷めたな、温め直すか?』
『いえ!滅相もありません!』
『ピザは焼きたてだから、美味いぞ』
『はい…もう本当にすみませ…』
『清貴はチビる位笑ってた。それに普段、色んな事をそつなくこなしている様に見える聡の、意外な一面が見れて良かったから、すみませんは無しな』
大樹はいつもと変わらない表情で、聡のグラスにグラスを当てると、赤ワインを口に含んだ。
ありがとうございます、と頭を下げてから、グラスを手に取り一口飲むと、思っていたよりも、ずっとフルーティーな味がした。
思わず一杯目は、クイッと飲み空けてしまった程だ。
ピザもパスタも絶品で、余り食事をしながら酒を飲む事のない聡も、あっさり完食した。
『ご馳走さまでした、片付けは俺がやります』
『ん?あぁ、なら頼むな』
皿をカウンターに置いてから、キッチンに入って片付け始める。
作ることはないが、自分がこれだけ作れば、キッチンは地獄絵図の様になっている筈だ。