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スケベ爺ゼウスの女の尻を追いかける旅
第7章 レートー
そう涙ながらに語るペネイオスの胸内では、憐憫と保身の間で激しい葛藤が起こっていました。

しかし、こうして、くたくたに疲れ果てた孤立無援の女神の姿を目にしてしまうと、堰を切って溢れ出す同情を押しとどめるすべもありません。


悩んだ末に覚悟を決めたペネイオスは、迷いを振り切るようにこう叫びました。


「……ええい、もう、なるようになれ!たとえこの水を涸らされて河川の中でも最も惨めな者よと呼ばれる羽目になろうとも、ワシはレートーのために耐え忍ぼう。さ、ここへおいでなされ。産の女神エイレイテュイアを呼びなされ!」



「あぁ、ペネイオス様…なんとお礼を申してよいか……」



その勇気ある誘いに呼応するようにみるみる鎮まっていく流れを見て、レートーは心の底からようやく出産できる土地が見つかったのだと喜びました。



しかし、その歓喜も束の間。



トラキアのハイモス山頂からはるばるこちらを見張っていたアレースが命令違反に気付き、ここぞとばかりに邪魔を始めました。



まずは怪力にものを言わせてパンガイオン山を根こそぎ持ち上げると、2人に向かって投げつけてペネイオスの清流を土砂で埋め立ててしまおうとしました。



次いで自分の盾を槍でガンガン打ち鳴らし、雷鳴か、あるいは戦場かと思うほどの凄まじい騒音を上げ始めたのです。


そのあまりのうるささ・恐ろしさにテッサリア全土が震え上がりました。



それでもペネイオスは引き下がらず、流れを鎮めてレートーを受け入れようとする態度を崩そうとしませんでしたが…


「ペネイオス様、どうかご自分の御身を第一にお考えください!やはり私はここから立ち去りますわ!お優しいペネイオス様が私のために災いを蒙ることになってはなりません。この度のご親切にはいつかきっと…きっと、お礼をいたします」



今度は逆にレートーの方が河神の身を案じて尻込みしてしまいました



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