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真夜中の贈り物
第8章 クレヴァスガーデンの淫らな花壇 前編
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「う……痛てて……」

 意識を取り戻したキオが最初に気づいたのは、気温の変化だった。

「あったけぇっ……なんだここ? ……う、うおおおっ!?」

 驚いたのも当然、そこには一面の緑が広がっていたのだ。
 空と雪以外何もなかった世界から、熱帯雨林とでも見紛うばかりの景色。

 切り立った地肌を覆うツタ類、生い茂る大きな葉の植物。色とりどりの大きな果実を実らせている樹木。咲き乱れる花。それも一種や二種ではない。目に眩いほどの色彩を以て生命が溢れていた。

「ここは……?」

 あたりを見回す。

 エヌフィーヌの姿はない。
 離れ離れになってしまったようだ。

 眼前の森に降り注ぐ光を追って目を上げると、狭い隙間から青空がのぞいていた。

 どうやら、雪の下に隠されていた裂目(クレヴァス)に落ちてしまったらしい。

 登ることができるかと、岩壁に手をやる。

「熱っ!」

 地肌は思いもかけない熱を帯びていた。
 どうやら空気が暖かいのは、地にこもった熱のせいのようだ。
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