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真夜中の贈り物
第8章 クレヴァスガーデンの淫らな花壇 前編
 ボッ……ボボッ……ボボボ……ドロロ……

 くぐもった遠雷のような、柔らかな地響き。

「ん……なんだ?」

 振り返ったキオが斜面を見上げると、もうもうと立ち込める霧のような巨壁が、こちらに向かって物凄い速度で駆け下りて来る所だった。

 エヌフィーヌが悲鳴を上げる。

「な……雪崩よぉっ!」

「逃げろっ!」

 ダッシュで駆けだすキオ。
 その後を転げるようにして追いかけるエヌフィーヌ。

「貴女が騒ぐから……」

「おっきな声だしてたのはエヌのほうじゃねーか!」

「キオのせいでしょ!」

 不毛の山稜に不毛な言い合いがこだまする。

「だっ……駄目……」

「無理だっ……逃げ切れ……ね」

 ゴバアッ!

 絶望の言葉ごと、二人は雪煙の中に呑み込まれて行った。


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