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真夜中の贈り物
第16章 ボイストレーニング
「駄目だよ、役者はどんなときでも平常心で……泣いたり、笑ったり、激怒したり……どんな感情を表現しているときも、心は完璧に身体を支配していなければ……」

 そう。心は完璧に身体を支配する。催眠暗示にかけられていても。操られているということすらも完璧に支配して……。鏡花を支配しているのは彰なのか。それとも彰を鏡花が支配しているのか。

 催眠が、催眠ごっこが二人の心をひとつに融け合わせひとつにする。
 快楽に打ち震える後輩の身体を腕の中に、まるでひとつの人影のようになって舞台上に立ちながら、鏡花はもうひとつの繋がりを心の中に強く感じていた。

 と、そのとき、背後に、彼女の背にそっと触れる何者かの温もり。

 それは……!

(太田垣クン……あ、彰……そんな所に!)

 舞台の奥の幕の裏に潜んでいたのか! ホリゾントライトを跨いで歩み寄った彰が、亜優を抱く鏡花に身体を寄せる。
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