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恋花火
第9章 ちっぽけなプライド
タケルは抑えきれない欲を、今にも爆発させそうな勢い。


はぁはぁと耳元で吐かれる息は熱く


瞳が潤んでしまっている。


私だって本当は今すぐにひとつになりたい。


だけどここでSEXしてしまったら、私は私の事を嫌いになってしまうだろう。


「どうしてもダメ……?」


捨てられた子犬のような顔で見ないで。


……いつもいつも振り回されてばっかりで


もうこんなのは嫌なの


「……挿れちゃダメ。」

「なんで……?」


ほら、言うんだ。


もうこんな関係には終止符を打ちたい。


都合のいい女なんて、もうまっぴらごめんだよ。


どうしたら私だけを見てくれるのか、そう悩んだこともあったけど


不埒な関係の私たちに、そんな純愛みたいなもの、求めたって無理だという事にようやく気が付いた。


「彼氏がいるの……」


「彼氏……?」


タケルは驚き、目を見開いていた。


「そう、彼氏がいるの。だからタケルとSEXは出来ない。」


本当はそんなものいない。


だって私はタケルが好きだから。


だけど私だって、プライドがある。


それはそれは


ちっぽけなプライドが。


「……彼氏ってなんだよ。誰だよ。」

「タケルには関係ない。タケルだっていつも好き勝手に彼女作るじゃん。」

「彼氏がいるのに一人でヤるとかさぁ」

「練習だよ。」


……練習ってなに。


自分で言っておきながら訳がわからない。


苦し紛れの嘘を、私は並べてゆく。


もうこんな関係を終わらせる為には、こうするしかない。


「……私はもっと世界を広げたい。タケルとずっと一緒にいたら、世界は広がらない。」


タケルはどんどん先を歩いちゃって、私はいつも怖かった。


けれど今のセリフを口にした瞬間、言ったことをすぐに後悔した。


……だって


タケルが、とても悲しそうな表情をしていたから……。
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