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だから僕とセフレになりませんか
第2章 一回試してからでもいいですよ
私たちはその後何事もなかったかのようにホールに戻った。
彼はカウンターに行き、先ほどと同じカクテルを持って来る。


「はい」

「ありがと」

私はそれを一気に飲み干した。
やっぱりこれが一番美味しい。
口の中に残った自分の味がやっと消えた。
嫌じゃないけどやっぱお酒の方が美味しい。

「さっき、今度って言ってくれましたよね。
 セフレ、なってくれるんですか?」

「うん。よろしく」

彼は鋭い犬歯を見せて笑った。
さっきまで色っぽかったのに今は子供みたいだ。

「じゃあコードネーム決めましょっか」

「何それ」

「だってその方が秘密っぽくて燃えません?」

「そうかな?」

子供みたいなのは顔だけじゃなかったみたいだ。
なんと言うか、この関係を本当に楽しもうとしてるんだろうことは充分に伝わった。

「さあ僕の名前決めてください。
 僕はお姉さんの犬ですから」

「Gin」

「じん?」

「これ。私ジンが好きなの」

私は手に持ったカクテルグラスを傾け中にある氷を鳴らす。


「知ってましたよ。じゃあ僕はジン」

「お姉さんは?」

「なにも思い浮かばない」

「ない?
 うーん。no idea。nothing。not。none。
 ノンじゃ可愛すぎて似合わないし」

「可愛くなくて悪かったね」

「いや。可愛いですよ。
 でもノンじゃふわっとしすぎですよ。
 えっとー。無いから、Zero。0。零。
 レイ。レイってどうです?」

「レイ?」

「綺麗だけど少し攻撃的でお姉さんにぴったり」

「悪くないね」

黒髪の美少女戦士と青い髪の無口な少女が頭のなかに浮かんだ。
どちらも幼い頃憧れた画面の中の世界のキャラクター。
うん。悪くない。

「じゃあよろしく。ジン」

「こちらこそ。レイ」


私達は、そこで連絡先を交換してそのまま解散した。
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