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だから僕とセフレになりませんか
第4章 ミルクティの憂鬱
「...そう、だっけ?」

彼は一瞬戸惑った顔をしてた。

「そうだよ。
 じんくんが話しかけてくれたとき凄く嬉しかったんだからね」

それは設定なのだろうか。事実なのだろうか。あの日、あのバーで、私は結構むしゃくしゃしてた。
耳をぶっ壊して、頭をカチ割って、身体を引き裂いて、消えてしまったら気持ちいいだろうなと思うくらい。
その破壊欲を収めてくれたのは彼だった。

真っ直ぐと目の前の男を見つめると、彼は一瞬だけ子犬みたいに可愛い顔を見せた。
これは芹沢ユウトの顔でしょ?

「じーんくん?」

私は彼に、さっさとジンに戻れ、とゆっくり彼の仮名を呼ぶ。
芹沢ユウトは静かにジンに戻る。


「俺のことはいいんだよ」

「うん。今一緒にいるってだけでいいよ」

「見てた」

「何を?」

「レイを。いつも一緒の場所に居て、誰か待ってるみたいだったけど。相手が来ることもなく帰るし」

「誰も待ってなかったよー」

「知ってる」

「どんだけ私のことみてたのー?」

それはジンの言葉なのだろうか。芹沢ユウトの言葉なのだろうか。
あのバーで彼は私を知っている様子だった。私は彼を知らなかったけれど。

私はその続きを聞きたくなかった。
この関係を切り捨てるキッカケになりそうなものを排除したかったから。


「そんなこと、どうだっていいよ。
 今の私の、レイの隣に、じんくんがいてくれれば」

「そ?」

「レイはじんくんのこと、好きだからね」

今此処に居るのは柊木アヤノではなく、レイは、芹沢ユウトではなく、ジン。
それを彼に再度確認させるためか、自分が確認するためか私はゆっくりとそう声に出した。
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