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Complex
第2章 始動
月曜日。
晴れ晴れとした気持ちでジムに向かったけれども、山口は急遽家庭の都合で休みを取ったらしい。
代わりのトレーナーがつくとのことだったが、丁重にそれをことわり、マイペースに体を慣らすことにした。

マシーンを使う前に、体を暖めるためにランニングマシーンで走り込んでいると隣から声をかけられた。

「今日も張り切ってるねー」

綾瀬はグレーのTシャツを汗で滲ませながら、友香の隣のマシーンに立つ。
ゆったりと、走るほどではないけれども早歩きのペース。
友香とは対照的にクールダウンの時間なのだろう。

「最初、誰かわからなかったよ」

息をあげることもなく足踏みをしながら綾瀬が言う。


「ああ、髪型。重たかったし、気分転換にばっさり」

彼女の言葉に彼は声を出さずに笑った。

前下がりのボブに切り揃えた髪は、汗を吸い少し毛先が濡れていた。
何年も伸ばしてきた髪。
こんなに短くするのは、本当に久しぶり。
似合っているのだろうか。
綾瀬が眩しそうにうなじに目を遣っているのを、友香は気がつかない振りをした。

「今日は山口君休みでしょ?トレーニング、付き合う?」

最初は断ったものの、まだまだわからないことだらけ。
時間を持て余しているという綾瀬の言葉を素直に受け止め、友香はそのアドバイスに耳を傾ける。
やっぱり、慣れてるなぁ。
そんなことを心の中で思いながら。

程よく体を動かし、山口もいないし今日はこのあたりで、と解散した。
綾瀬も仕事の時間が迫っていたのだろう。

シャワーを浴びた友香は行きと同じように化粧をすることもなく、半乾きの髪を持て余しながらロビーに出た。

すると、またしても綾瀬。
友香を待っていたのだろう。
友香が姿を現わすと、すっと近寄ってくる。
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