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月下美人
第2章 月下美人 -臆病な愛-
「俺は普通のカップルがどれぐらいの頻度で会うのかわからないけど、今仕事に真剣になりたい。だから、今までのように会うことが出来ない」
仕事場でのいやな気分が毎日続き心が晴れなくて、でも工に会えば嬉しいし甘えられるから毎週の日曜を楽しみにしていた。
だが、そんな中の工の言葉に撃沈。
凄くりさの心をぐさっと釘を指した。
目の奥が熱くなったが、
りさはぐっと堪えた。
「うん、わかったよ。仕事、真剣に頑張らなきゃね」
満面の笑みを作って、工の気持ちを肯定し応援する言葉を伝えた。
きっと工は我慢したりさの気持ちを分かってか、嫌いになった訳じゃないし、会わないってことではないよと言ったが、りさはその言葉を聞いてもショックから戻ることはできなかった。
「おいで、ぎゅっとしようよ」
工はシートベルトを外してりさにおいでと言った。りさもシートベルトを外して工の腕の中へ体を埋めた。
ガッチリとした腕と胸元に抱き締められるのがりさは好きだ。
安心もできるし、甘えられる。
暖かい工の体温を感じるのに、今日は言われた言葉にほっかりとなにかが空いてしまった。
「大好きだよ、りさ」
りさよりも工の方が好きという言葉を言う。
今までに付き合ってきた人たちはりさにいつも気持ちを伝えてくれる。
大好き、好き、会いたい、一緒にいたい、ずっと一緒にいよう。
もらった言葉は工だけじゃなく付き合う相手は皆、気持ちを言葉に出し、りさはそれを真剣に信じることが中々出来なかった。
いつか来る別れを感じるのが怖かったからだ。
「わたしもだよ」
返答はいつも曖昧。
しっかりとした言葉を返すことはなかった。
家まで送ってくれた工にありがとうと言って、仕事を頑張ってねと伝えその日は別れた。
毎週会っていた工との時間が無くなることに家に帰って部屋に閉じ籠り、思いっきり泣いた。
一人で泣くなら工に訴えればよかった。
だが、りさは中々自分の気持ちを相手に伝えることがどんな場合でも時でも出来なかった。
嫌われるのが嫌というよりも返ってくる言葉に怖がり中々一歩を踏み出すことが出来なかった。
ただ、臆病なだけの自分に苦しくなった。