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純の恋人
第10章 国重一の後悔
 
 奴は病院関係者だ、今まで何度も不審者を探して聞き込みはしたが、それでは存在が上がらないのも無理はない。そして事故の日、この病院に運ばれ、医師が強姦を揉み消した理由もはっきりする。息子の犯行を知った父親が箝口令を引いたんだろう。

 病院と暴力団と父親。調べてみなければ確証はないが、おそらく繋がるのは金だ。病院は息子可愛さに、暴力団と父親は利益のために人身御供としたのだろう。こいつが――吉川 純が全てを忘れれば、事態は丸く収まる。

「晴久さんは、とても明るくて優しい人です。大学が終わったらすぐに駆けつけてくれますし、どこへ行くにも一緒に来てくれますし。晴久さんがお話してくれると、自然と気持ちが明るくなって、記憶がなくなった不安も、飛んでいくんです」

 何も知らない純は、無邪気に笑みを見せる。だが俺は、その笑みに見覚えがあるような気がした。

「本当に、幸せだと思うのか?」

 笑っている人間が、心から感情を表しているとは限らない。こいつは特に、人へ余計な気を遣って無理をする性質だ。助けてくれと泣いた時の姿が、俺の頭によぎる。いや、そうあってほしい願望が、俺の目を狂わせているのかもしれないが。
 
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