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純の恋人
第10章 国重一の後悔
病衣を纏っていたこの男を、俺は今まで疑いもしていなかった。正確に言えば、存在をあまり認識していなかった。入院していればそこで交友関係も生まれる、そこで彼氏の一人が出来ても、問題はないと。
ストーカーを三人に絞って考えた事も、見逃しに繋がったのかもしれない。どのみちこの男に気付けなかったのは、俺の落ち度だ。
「初めまして、オレは純ちゃんの恋人の、土居 晴久です」
「晴久さん、こちらは国重 一さん。記憶がない頃の、私の知り合いみたいです」
「知り合いって、どんな?」
「えっと、それは……」
白々と訊ねる土居に苛つくが、ふと俺は気付く。今、純はなんて言った? 説明が出来ず、俺に困った目を向ける純から目が離せない。ああ、そういえば、あれもこれもよく考えたらおかしかったんだ。
「……いや、大した知り合いじゃない。少なくとも、婚約者が心配するような仲じゃないから安心しろ。元気ならよかった、俺は帰るから」
「そうですか? あまりお構いも出来ず、申し訳ありません」
「病人が気を遣ってどうする。気にするな、俺達は『相棒』なんだろう?」