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純の恋人
第10章 国重一の後悔
こいつが俺を責めるのも当たり前だ。結局こいつの周りに集まっていたのは、身勝手な理由で傷を付ける男ばかりだったのだから。
「だが……だからこそ、もう過ちは犯したくない。許せとは言わない、恨んだままで良い。だが、こんな馬鹿げた人間の言いなりにはならないでくれ。お前自身が当たり前に持つべき自由を、俺は死んでも取り戻すと決めたんだ」
「そうしないと、経歴に傷が残るからですか? 犯罪を見逃したなんて、刑事からすれば不名誉ですもんね」
「違う! 全て言い訳に聞こえるかもしれないが、これが俺の覚悟だ」
俺は懐から、昨日用意した退職届を渡す。それを受け取った純は、小さな声で呟いた。
「嘘……」
「嘘じゃない。今回、俺は自分がいかに傲慢か自覚した。思い上がった人間に、誰かを救うなんて資格はない。今日、お前を悪漢から取り戻したら、俺は警察を辞める」
「そんな……駄目です! 国重さんは、いつも正義のために、頑張っていたじゃないですか! 頑張っている人が報われないなんて、そんなの嫌で、私は――」
純はそこまで言って、不意に口を閉じる。そして頭を抱えると、啜り泣いた。