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純の恋人
第10章 国重一の後悔
「あまり自分を責めるな。俺が初めに話も聞かないで、お前を門前払いしなければよかったんだ。全部、俺が悪い」
「国重さんは、その後取り返そうと頑張ったじゃないですか。私は全部思い出しても、なお逃げました。立ち向かう勇気が、ありませんでした。一人で大丈夫なんて嘘です、誰かに縋りたくてしょうがないんです」
純の肩は小さく震えている。よほど特殊な人間でもない限り、それが当たり前だ。刑事でも探偵でも弁護士でもないこいつが、助けてと訴える事になんの罪があるのか。
俺は、純の小さく細い手を握る。もう、二度と振り払ったりしない。こんな手を守るため、俺は警察官を志したんだから。
「必ず、助ける」
純は小さく頷き、また涙を一筋こぼす。俺は折れてしまわないよう純を抱き留めると、ドアの外に呼びかけた。
「そういう訳で、お前の恋人ごっこも終わりだ。聞いていたんだろう? 中に入ってこい」
呼応して現れたのは、全ての黒幕――土居 晴久。今時の若者らしく軽そうな姿をしているが、腹の中は化け物だ。今にも俺を斬りつけそうな瞳が、狂気を示していた。