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純の恋人
第10章 国重一の後悔
 
「そうだよ……純ちゃんは記憶がなければ、オレを選ぶんだよ。じゃあ、終わりになんてしなくていいじゃん」

「でも、過去は変わりません。いくら私が忘れても、私とあなたが出会った過去は変えられません。変えられないものをごまかしても、なかった事には出来ないんです……!」

「――そんなの、矛盾じゃん! 純ちゃん、さっきそいつは過去がどうでも今積み重ねたものがあるからって、許してたじゃん!」

「あなたは、何を積み重ねたんですか! 国重さんは私を助けようと、休みを犠牲にしてまで、事件を調べてくれました。あなたは嘘を塗り固めて、都合のいい顔しか見せなかったじゃないですか!」

 すると土居は歯を食いしばり、拳を振り上げる。

「っ!!」

 だが、もう狂気は指一本だって通しやしない。俺は腕を取り捻ると、土居を床に押さえつけ馬乗りになった。

「ぐだぐだ言ってんじゃねぇ!! テメェはハナからやり方を間違えたんだよ……好きな女を振り向かせたいくせに泣かせてる時点で、男として失格だ!!」

 土居は暴れるが、こんな男を取り逃すほど俺は脆弱じゃない。すると土居は力での抵抗を諦め、口を挟んできた。
 
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