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純の恋人
第10章 国重一の後悔
「――だったら、逮捕でもなんでもすれば? でもさ、逮捕って逮捕状ないと出来ないんだよ。あんたが息巻いて手錠を掛けたところで、警察が動かなきゃオレは捕まらない。誰もオレを捕まえる事なんて、出来ないんだ!!」
暴力団、病院、政治家。三つの後ろ盾を持っている土居は、歪んだ笑みを浮かべオレに吐いて捨てる。だがその自信は、すぐに崩れるだろう。
「……そろそろ、時間だな」
「はあ?」
するとちょうどタイミング良く、部屋の扉が開く。入ってきたのは、吉行と、数人の同僚。吉行は土居を見下ろすと、一枚の紙を内ポケットから取り出した。
「土居 晴久、あなたを麻薬取締法違反容疑にて、逮捕します」
あるはずのない逮捕状に、土居は目を見開き言葉を失う。同僚が手錠を取り出し縄を掛けたのを確認すると、俺は土居から身を離し、青ざめる純を抱き寄せた。
「国重さん……麻薬って、一体どういう事ですか」
「この男、狩野組から手に入れた麻薬で、お前を薬漬けにするつもりだったんだ。依存させて狂わせてしまえば、もう二度と逃げたりしないだろうってな」