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言われてみれば、単純で。
第2章 君との出会いは、偶然で。
金曜日、珍しく飲みにも行かないで真っ直ぐ帰ってきた。
仕事をする気がなくて定時で帰宅したのは久しぶりだ。

やる気ないし、会社にいてもなんか落ち着かない。
かといって飲みに行く気にもなれなくて...

帰宅途中、煙草を買うため自宅付近のコンビニに寄った。
そこにあったのは、随分と懐かしい顔。

俺が知ってる顔よりも随分大人びてて見た目も少し変わってた。
だけど身長はあの時とあまり変わらないまま。

幼い頃の制服姿しか見たことがないが間違いなくあのスーツ姿の女性は彼女だ。


仕事への意欲の無さがこの再会のためだったのならば、今日の俺は最高に冴えていた。


彼女はコンビニの前にある灰皿の横で一服をしてた。
俺はその隣に立ち、彼女と同じように煙草に火をつける。

「もしかしてキョーちゃん?
 俺、覚えてる? えっと、丹羽って言うんだけど。中学ン時の」

「中学の丹羽?…丹羽、イツキ?」

彼女は俺のことを『丹羽先輩』としか呼ばなかったのに下の名前まで覚えていた。
そんな小さなことだけれど俺は少し驚いた。当時の俺が知ったら喜ぶんじゃないかな。


それはそうと、キョーちゃん、随分と小さくなったね。
当時は似たような身長だった、俺をチビと馬鹿にしてた彼女は、今の俺を見上げる首が痛そうなほど代わり映えしない身長だった。


「ホントに本人ですか?」

「なんだよ。俺が丹羽イツキ、って言ってるのに」

彼女の疑いの目。何故だか、妙にイラついて彼女の顔に煙草の息を吹きかけた。
彼女は少し涙目になってこっちを見上げてる。

伏せ目勝ちな彼女の睫毛は当時から思っていたけれどもラクダみたいにバサバサしてて重くないのかと心配になるくらいだ。
そこらへんの女みたいに塗りたくられたものではなく天然に出来上がっているので一本一本が細く見え、量が多いのが分かる。

瞬きしたら音がするんじゃないかって思っちゃうよね。
上から見下ろすとそれをより一層感じた。

その睫毛の隙間から彼女が俺を見る。


「ドイツだったら煙かけるのは傷害罪です」

「相変わらず、博識だね。キョーちゃんは」

そう言いながらも別に怒っているわけではなさそう。
2本目の煙草に火をつける彼女はまだ俺に付き合ってくれる様子だった。
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