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言われてみれば、単純で。
第2章 君との出会いは、偶然で。
スマホに入ったキョーちゃんの連絡先をもう一度確認していると
彼女は俺の隣に戻ってきた。


「あれ?お会計は...」

「済ませたよ」

「いや私払ってないです」

「いいよ、奢らせてよ」

「じゃあ次飲むときは私が払います」

約束取り付けた覚えはないのに彼女の中で次はあるようだった。
昔の事とはいえ俺は先輩なわけだし、何となく気分もいいから払っただけ。
それなのに次の約束という大きなおまけがついてきた。

店を出ようとすると中から店主らしき人が出てきてキョーちゃんと立ち話。
その横でぼーっと話を終わるのを待っていると、彼は俺に キョーちゃんをよろしく、って言ってきた。
よろしく? 今日十数年ぶりに再会した俺になにをよろしくするのだろう。

言葉の選択に迷い俺は、また来ますとだけ伝えると、店主はにこりと笑った。

「丹羽先輩。ご馳走様でした」

「いえいえ。此方こそいいお店教えてくれてありがとう」

「また来ますって言ってましたけど、また行くんですか?」

「え? 今度は奢ってくれるんでしょ?」

「あ、そうでしたね」

上機嫌になりながらも酔いがまわっているのかのんびりとした足取りであるくキョーちゃん。
その後ろを俺もゆっくりと歩く。

俺は自分の家への道のりを歩いている。
目の前のキョーちゃんは何処へ向かっているのだろうか。
そういえば彼女の家の方向を聞いていない。
地元だと言っても此処は俺たちの実家より少し離れた場所だ。少なくとも徒歩圏内ではない。

「キョーちゃん、今住んでるの何処?」

「いえ、えっと、あの一際高い背の高いマンションの道挟んだ向こう側です」

「は?」

「だから、あっちの方向ですって。最近出来たんですよね。あのマンション」

「俺、そのマンションに住んでるんだけど」
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