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言われてみれば、単純で。
第3章 俺と君は、曖昧で。01
今日は土曜日。
俺はいつものようにキョーちゃんの家に居る。
目の前に置かれたマグカップ。その中にはインスタントコーヒー。
それが冷めかかった頃、俺は座っていたソファから立ち上がった。
隣ではそのソファを背もたれにして床に座るキョーちゃんが静かに本を読んでいる。
彼女がすごく真剣なもので俺の存在なんて気にする様子も無かったので邪魔をする事にした。
「キョーちゃん煙草」
「あ、キッチンで換気扇つけて下さい」
「キョーちゃんも煙草」
「いや、ふたり並ぶと狭くありません?」
「問題ないよ」
「じゃあ良いですけど」
キョーちゃんは渋々といった様子で読んでいた本にブックマーカーを挟みソファに置いた。
キョーちゃんの家のキッチンは狭い。
大型の冷蔵庫が置かれている所為もあるだろう。
大人がふたり並べば肩がぶつかり合いそうになる。
隣に並ぶと、ソファに居たときよりも距離が近い。
キョーちゃんの匂いがした。
シャンプーと、煙草と、あとは何だろう。
煙草とは違う少し甘い匂い。
煙草を咥えポケットからライターを取り出そうとした。
しかしそこにライターはなかったようだ。
「はい、どうぞ」
「ありがと」
キョーちゃんは自身のジッポに火を点し俺の煙草に火をつけた。
これ、前も1回やられたことがある。最初に一緒にのみに行ったとき。
「それ、どこで覚えてきたの?」
「何がですか?」
「わざわざ火をつける必要ないでしょ。
ライター手渡せばいいじゃん」
「だってこれは私のライターですから。
人に手渡すなんてなくしたらどうするんですか」
「そういうこと?」
「そうですよ。命綱です」
「それは言い過ぎ」
何処かで変な男に覚えさせられたのかと思っていた。
どうやら違ったようだ。
それにしても、こんなに大事にするものって。
一体どんな思い入れがあるのだろうか。
それは俺が聞く前に彼女が話し始める。
俺はいつものようにキョーちゃんの家に居る。
目の前に置かれたマグカップ。その中にはインスタントコーヒー。
それが冷めかかった頃、俺は座っていたソファから立ち上がった。
隣ではそのソファを背もたれにして床に座るキョーちゃんが静かに本を読んでいる。
彼女がすごく真剣なもので俺の存在なんて気にする様子も無かったので邪魔をする事にした。
「キョーちゃん煙草」
「あ、キッチンで換気扇つけて下さい」
「キョーちゃんも煙草」
「いや、ふたり並ぶと狭くありません?」
「問題ないよ」
「じゃあ良いですけど」
キョーちゃんは渋々といった様子で読んでいた本にブックマーカーを挟みソファに置いた。
キョーちゃんの家のキッチンは狭い。
大型の冷蔵庫が置かれている所為もあるだろう。
大人がふたり並べば肩がぶつかり合いそうになる。
隣に並ぶと、ソファに居たときよりも距離が近い。
キョーちゃんの匂いがした。
シャンプーと、煙草と、あとは何だろう。
煙草とは違う少し甘い匂い。
煙草を咥えポケットからライターを取り出そうとした。
しかしそこにライターはなかったようだ。
「はい、どうぞ」
「ありがと」
キョーちゃんは自身のジッポに火を点し俺の煙草に火をつけた。
これ、前も1回やられたことがある。最初に一緒にのみに行ったとき。
「それ、どこで覚えてきたの?」
「何がですか?」
「わざわざ火をつける必要ないでしょ。
ライター手渡せばいいじゃん」
「だってこれは私のライターですから。
人に手渡すなんてなくしたらどうするんですか」
「そういうこと?」
「そうですよ。命綱です」
「それは言い過ぎ」
何処かで変な男に覚えさせられたのかと思っていた。
どうやら違ったようだ。
それにしても、こんなに大事にするものって。
一体どんな思い入れがあるのだろうか。
それは俺が聞く前に彼女が話し始める。