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言われてみれば、単純で。
第3章 俺と君は、曖昧で。01
今日は金曜日。
キョーちゃんが言うには土曜日。
ご飯を食べ終わって缶ビール片手にキッチンで煙草を吸う。
狭い空間に大人ふたりで。

キョーちゃんの肩が俺の腕に当たりっぱなし。
今日は随分と機嫌がいいみたい。
最近分かった事だけど、機嫌がいいと何故か少し距離が近くなる。

「キョーちゃん、煙草、身体に良くないよ?」

「煙草は身体に良くないですが、先輩は精神上良くないです」

「そんなことないよ。俺はあれでしょ。癒し系」

「勘違いです。壊れたラジオ系です。
喋らない事がないくらい喋りますよね」

「キョーちゃんって、冷たい。
変わってないね」

「先輩は変わりましたね。見た目が」

「そろそろ見慣れたでしょ?」

「まあ、少しはそうかもしれないですね」

俺を見上げるキョーちゃんは悪戯っぽく笑った。
ほら、ふらふらしてるから今、おでこが俺の腕に当たったよ。

「思い出の中のキョーちゃんより
今のキョーちゃんのほうが小さいね」

「先輩が急激に成長しただけです。当時、私と一緒くらいでしたよね」

「高校入ったらさ、一気に伸びたんだよね」

「成長しましたね」

「おー。すげーだろ。惚れるなよ?」

「惚れません」

「いや、惚れてくれよ」


キョーちゃんは珍しく声を出して笑っていた。
静かに笑うのも可愛いけど、たまにはこういうのも可愛い。

笑うたびにキョーちゃんの肩が、腕が俺に当たってて、
なんか、こういう距離もキョーちゃんとなら嫌じゃない。
パーソナルスペースは広いほうだけど、キョーちゃんならいい、そう思う。
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