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言われてみれば、単純で。
第1章 おれのきもちはフクザツで。
と思っていたはずなのに今日、キョーちゃんが何故か学校に着ていた。
昇降口で出会って彼女が歩く方向についていく。

朝の、結構早い時間。
俺は部活があるから来たけど、彼女は来ないと言っていたのに来ている。
なぜだろうと彼女に声を掛けた。

「キョーちゃん、何してんの?」

「あ、丹羽先輩。お早う御座います」

「はい、おはよ」

「私は図書室に来ました」

「何借りるの?」

「読書感想文の本です」

「そっか、俺も書かなきゃいけないんだよな」

「じゃあ、一緒に借りますか?」

珍しく、というか初めて彼女が誘ってくれたのでそのままついていった。
図書室は静かだった。人が居なくて、委員会の子も居ない。

「図書委員の子、いないよ」

「そういう時でも借りれます」

「そうなの?」

「それ用の借りる紙があるんです」

彼女は静かなほうが好きなので人が来ない早い時間に来たらしい。
だから、俺は彼女に会えたんだ。
ありがとう、図書館をうるさくする委員会の子。

「キョーちゃん、お勧めの本ありますか?」

「これですかね」

「サッカー入門?」

「丹羽先輩。サッカー部ですよね」

確かにそうだけど、知ってるんだ。嬉しかった。

「キョーちゃん、俺サッカー部なの何で知ってるの?」

「GW明けくらいに地区の大会で準優勝してましたよね。
 そのときの表彰、全校朝礼の壇上に居たのを見ました」

「見ててくれてたの?」

「ひとりだけ、ちっこいから目立ってました」

「そうですか」


気にしてるのに。彼女は、そういうこと結構言う。
でも、そのくらい正直な方がいい。まあ、俺の場合は、だけど。


「今も多分、部活の時間ですよね。
 サボってる暇あるんだったらこれ読んでルール覚えればいいと思います」

「この本に載ってる事はもう知ってる事だと思うけど。
 それにもうすぐ引退だから別にいいよ」

「本を読んでれば黙ってくれると思ったんですけど」

「ひどいね」

「まあ、丹羽先輩だからいいんです」

そう言った彼女は少しだけ笑ってた。
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