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言われてみれば、単純で。
第1章 おれのきもちはフクザツで。
2学期が始まった。まだまだ暑い日は続く。
俺は夏休み、図書室の空調が寒いくらい涼しいことをキョーちゃんから聞いた。

放課後、用もなく図書室へ足を運ぶ。涼しさを求めたのもあったけど、あわよくばキョーちゃんに会えると思ったからだ。

そして、これは本当に幸運な事だった。キョーちゃんが居たのは図書室のカウンターの中。


「キョーちゃん、何してんの?」

「先輩は何処にでも現れますね」

「基本そうだね」

「夏休みも思いましたけど、図書館とか似合いませんね」

「まあ、俺もそう思う」

「外でサッカーボールでも追ってればいいのに」

「そっちのほうが好きだね」

「じゃあ、行って来て下さい」

「ひどくない?」

「わたしは委員会の仕事なんです」

「後期も委員会、入ったの?」

「今度は図書委員です」

「だからカウンターに居るんだね」

「そうです」

「キョーちゃんは水曜日の放課後担当なの?」

「そうですけど、何故ですか?」

「聞いてみただけ」

それ以降、俺は水曜日の放課後図書室に入り浸るようになった。
今まではすれ違いざまの会話ばかりだったけど、それからは彼女と長時間ゆっくり話すことができた。

週1回だけど、結構好きな時間。


「キョーちゃん、お勧めの本ありますか?」

「これですかね。恋愛小説です」

「ふーん。なんでこれ?」

「先輩が 愛が足りないと仰っていたのでこれで補っていただこうと」

確かに言いました。
でも俺はキョーちゃんが冷たいから言ってみただけなんだよ。
勿論こんな理由、言ってないけど。

とりあえず、そのおすすめとやらを読んでみることにした。


「…これ、すっげぇどろどろしてるんですけど」

「そうですか? この作家さん、心理描写すごくないですか?」

「抉られるレベルにね」

「先輩。どうですか? 愛、補えました?」

補えるわけないよ。こんなどろどろ話で補えない。
本なんて読まずに軽くお喋りしてた方が補えたのではないか、と思ったのは
図書委員の仕事が終わり、キョーちゃんが俺に「また明日」そう言ってからだった。
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