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ただ一つの一対
第3章 ただ一つの欠陥
 
「女という生き物は、いつから女として目覚めるのでしょうか」

「若……」

「あなたにこんな事を問うのは酷ですが、どうしても思考が止まらないんです。何がきっかけで、少女は女に変わるのでしょう」

 現在菊が関わる女で、少女と呼べる相手は菖蒲だけである。明らかな悩みの種に片倉は溜め息を漏らし、棘のある口調で答えた。

「簡単な話です。女とは、生まれた瞬間から女なのですよ」

「……そうですか? しかし僕はその辺りを歩いている女児を見ても、それを女だとは思えませんが」

「その辺りを歩く子ども全員に発情されても困ります、犯罪ですよ」

「結局、あなたは何が言いたいんですか」

 菊は拗ねた物言いをしながら、足を組み直す。汚れ一つない革靴を履いた長い足は大人の男そのものであるが、ふてくされる仕草は少年と大差がない。片倉は思わずころころ笑いながら、結論を述べた。

「女児はその華に価値があるとは知りませんから、特段表には出さず、磨く事もせず奥にしまっています。しかしある程度世間を知れば、華は望みを叶える武器だと悟ります。奥にあるか、表に出ているかの違いはあれど、女の本質はいつでも同じなのです」
 
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