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本能のまま愛す
第3章 竜也との出会い
今日の訪問先は独り暮らしの90才の高齢者。可愛らしい品のある小さなおばあちゃま。とても元気で人の手を借りるのを嫌がっていたが、周りの勧めもあり、買い物と掃除をヘルパーに頼んでいた。
週に1度百合子が訪問している。

「百合子さん夕方から雨が降るかもしれないから今日は私のつまらない話に付き合わなくていいよ。早く帰りな。」

「いつも居心地が良くて、つい長居しちゃってごめんなさいね。そろそろ帰りますね。」

「ああ。いつもありがとうよ。また来るの楽しみにしてるよ。」

「はい!また来週よろしくお願いします。」


訪問を終えて駅へと向かうが、どんよりと辺りが暗くなる。ゴロゴロと遠くの空が鳴きはじめる。

「大変!おばあちゃまの言うとおりだわ。本当に降りそう…急がなきゃ」

ポツ

ポツ


降り出した雨はあっという間に大粒に。

静かな住宅街に雨宿りする場所もなく早足で歩き続けるが、突然空がピカッ!とひかり、もの凄い音をたてる!

「キャー!こわい!」

思わず耳をふさぐ。急に激しい雨が降りそそぎ視界さえ白く見える。
ふと、『Bar雫』という看板が目に止まる。

雨宿りさせてもらおうと急いで入り口へ向かう。
看板から店の入り口までは細い石畳になっており両脇には綺麗な花が植えられていた。
まだ15時過ぎ開店前だろうと思ったが扉は鍵がかかっていなかった。そっと開けると、リンリン♪とドアに付けてある鈴が鳴った。
木を基調にした店内は薄暗く、長いカウンターの向こうにはお酒がズラリと並んでいた。
静かな住宅街の中にあるとは思えない不思議な空間だった。

「素敵…」
思わず声に出していた。

「ありがとうございます。今の貴女は素敵を通り越して刺激的ですよ!あはは!突然降り出しましたからね~今タオル持ってきますから」

「あっ突然ごめんなさい。少しだけ雨宿りを…開店前にすいません。」

「今日は休みなんですよ。ちょっと掃除に来てたんでね。」
男は奥からタオルと真新しいTシャツを取ってくると百合子に渡した。

「そこにトイレがあるから着替えておいで。服は乾燥機にかけるから。」

「いえ…あの…そこまではタオルだけで大丈夫ですから。すぐに帰りますし…」
「いやぁ~目の保養にはなるけど…そのまま歩くのはまずいでしょ。」

「え?あっ!!やだっ!」
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