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本能のまま愛す
第3章 竜也との出会い
白いブラウスは雨に濡れて下着がくっきりと透けていたことに気がついた百合子は恥ずかしさで顔が真っ赤に火照る。

「お借りします…」
急いでトイレへ駆け込み改めて鏡で自分を見て驚いた。こんな姿で電車に乗らなくて良かったと思った。

「Tシャツありがとうございます。洗って返しますので…」

着替えを終えて店内に戻ると先ほどの男性はカウンターの中にいた。
さっきは暗くてよく分からなかったが40代前半くらいの穏やかそうな男性だった。

「ああっそれあげますよ。記念に!あはは。適当に座ってください。俺は今から軽い食事とるけど一緒にどうですか。お酒なら何でもあるしコーヒーもありますよ。」

突然押しかけた事などまったく気にする様子もない男性の対応に百合子の緊張もほぐれていった。
「ご親切にありがとうございます。」
「あはは。君にとっては災難だろうけど俺は大歓迎だから!どうせ休みで暇してたんだ。ゆっくりしてってよ。何飲む?」

「ありがとうございます。せっかくなのでスコッチを水割りで…。」

「了解!俺はこの店のオーナーの青木竜也。どうぞ」

百合子は出されたスコッチを一口飲んだ。お酒を飲むのは久しぶりだった。

「こんな素敵な場所でお酒飲むのは久しぶりです。ふふふ」
百合子の幸せそうな微笑みに竜也はドキッと一瞬見惚れた。

「そうか…ゆっくりしていくといいよ。あっちのソファーのほうが落ち着くからどうぞ。DVDも何でも揃ってるから好きなの見てて。雨止んだら教えますから。」

店の奥には大きな画面があり、前にはソファー席があった。竜也はそこに百合子を座らせ前のテーブルに飲み物とホットサンドを置いた。

「良かったらどうぞ。」

百合子はお礼を言うとウイスキーを少しずつ飲みながら、映画を観ていた。

(こんなゆっくりした時間…何年ぶりかしら…)

ふふ…

お酒のせいか幸せな気分になっていた。


「楽しそうだね」

同じウィスキーの入ったロックグラスをテーブルに置くと竜也は隣に座った。

「お昼間から素敵なお店で優雅に映画なんか観て、お酒飲んで…こんな時間の過ごし方、忘れていました。楽しくて。ふふ」

「それは良かった。」

竜也はウィスキーに口をつけ画面に映し出された古いフランス映画を黙って観ていた。
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