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第9章 ヌードモデル ー絵画教室ー

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　進路相談室
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受験の申込書を見つめ、総士の父親を待つ春香。

♪コンコンッ
”来たっ”
春香に緊張が走る
「失礼します」
入って来たのは、温厚そうな総士の母親だった
「あっ！どうぞ」
一瞬驚く春香
「いつも、息子がお世話になっております」
「いえ、こちらこそ」
「何度も、主人がご迷惑をお掛けしてすいません」
深々と頭を下げる母親
「とんでもない、どうぞ座って下さい」
春香は、総士の母親に会うのは、初めてであった
物腰が柔らかく、どこか気品さえ感じさせるマダム

「息子の進学の件ですが」
挨拶も半ばに、本題に入る総士の母親
「はっはい」
慌てて身構える春香
「息子の好きなように、させてあげて下さい」
「えっ！」
思いもよらぬ、総士の母親の言葉に驚く春香
「先生、美大の受験をお願い致します」
「よろしいんですか？」
「えぇ、主人とは昨夜、話をつけましたので」
「わかりました」
春香は、ほっと胸を撫で下ろした
「先生、息子に伝えて下さい」
「はっはい！」
「自分で決めた道なのですから、私達からの援助はないと...」
「えっ」
「自分の足で、しっかりと大地を踏みしめて歩きなさいと、お伝え下さい」
凛とした表情をし、厳しい口調で話す、総士の母親
「はい、しっかりとお伝えします」
母親の、強さと優しさを感じた春香は、背筋を伸ばして答えた

席を立ち、退室する総士の母親
「先生、もう一つお願いしていいですか？」
「はいっ、何でしょうか？」
「総士に、たまには家に顔を出しなさいと、伝えて下さい」
「わかりました」
総士の母親を、見送る春香
母親の背中は、どこか、寂しそうに見えた。