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愛しては、ならない
第53章 最後に、もう一度だけ②


菊野は涙を溜めた目でおれを見て唇を噛み、両腕に服を抱き身体を隠しながら震えている。



「も……許して」

「嫌だ……まだ離したくない」



彼女が逃げれないように拘束の力を強めると、腕の中から啜り泣きが聴こえる。



「お願い……こんなにずっとされて……私……本当に変になっちゃ……」

「――いいじゃないですか……それでも」

「……っ」



彼女をこちらに向かせ、頬を指でなぞりその目を真っ直ぐに見詰める。

少女のような菊野。それでいて時に妖艶で、俺を惑わせて――いつもか弱いのに、強い意思をその小さな身体の中に秘めている。

俺を引き取った事も、その強い意思なくしてはあり得なかった。

大人なのに子供のようで、弱そうなのに強い――

そんな貴女を、俺は愛した――


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