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愛しては、ならない
第14章 檻の中の愛



俺は激情をひた隠し、努めて穏やかに言う。


「菊野さんが、俺の顔をちゃんと見てくれたら、離します」



「……っ」



彼女は、息を呑んだ。


小さな肩が震えて、耳や首筋まで紅い。



「菊野さん……
何故俺を見ないんです」



「だ、だって……っ」



菊野は、怒った様な声を上げてこちらを見たが、目が合うと絶句してまた顔を逸らしてしまった。


いとおしさが込み上げて、彼女の顎を掴み強引にこちらを向かせ、唇を塞いだ。



始めは強く抵抗されたが、彼女の背中から首筋に向かい掌で優しく撫で上げながらキスをする内に、身体の力が抜けていき、最後は俺のなすがままになっていた。



どれ程の時間、そうしていたのだろうか。



彼女がいつの間にか泣いていて、俺はようやく唇を離した。


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