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愛しては、ならない
第14章 檻の中の愛
「俺も、謝りませんから」
「……っ」
菊野は、思い出した様に乱れた胸元とスカートを直し、逃げる様にソファから飛び降りるが足が縺れひっくり返ってしまい、頭を床にぶつけてしまう。
「いったあ――い」
菊野は悲壮な響きの叫びを上げ、頭を抑える。
「大丈夫ですか……」
無事な方の手を差しのべると彼女は表情を堅くして後ずさるが、俺は言った。
「今日は、もう何もしませんから安心して下さい」
「今日はっ……て」
菊野がまた真っ赤になるが、俺は手を掴み立たせ、また捲れてしまったスカートを直してやった。彼女の脚に触れないように注意しながら。
菊野は額を抑えたまま、決まり悪そうにドアを開けて小さく言う。
「……お、お休みなさい」
「菊野さん」
ビクリと肩を震わせ、振り返らずドアノブを握る小さな背中に俺は言った。
「俺は、錯覚でも構いません」
「――っ」
菊野はドアを開け、また転びそうな頼りない足取りで走り去った。