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愛しては、ならない
第14章 檻の中の愛
階段を降りてリビングへ入ると、やはり菊野が居て味噌汁に火をかけていた。
俺を見ると、また顔を強ばらせたが、直ぐ様笑顔を作る。
「お早う剛さん……
今朝は和食よ……」
作り物の笑顔だとしても、目の前に居るのは喉から手が出る程に欲しい、ただ一人の女(ひと)である事には変わらない。
髪を片方に寄せて結わえている彼女の白いうなじや、襟元から覗く肌が艶かしく見える。
「お早うございます……」
彼女の後ろに回り込み、抱き寄せてしまおうかと思い手を伸ばすが、祐樹が呑気な顔でカウンターに座り茶を啜りながらアニメを見て笑っていて、引っ込めた。
「あ、剛の方が今日は寝坊した――!
俺、今日は六時半に起きたもんね!
勝った――!」
ピースサインを頭の上に作り得意気になる義弟は、いつの間にか
"僕"でなく"俺"と言うようになったらしい。
「俺も起きてたぞ……
ここに来なかっただけで」
俺も空いているカウンター席に座り、湯呑みを寄越す菊野に軽く頭を下げ、茶を啜る。
「ぶ――っ!
起きるっていうのはさ、目が開いただけじゃ起きるって言わないの!
ベッドから出て着替えて顔を洗ってリビングに来てママにお早うを言った時から
"起きてる"て事になるんだよ!」
祐樹は屁理屈を並べ鼻を鳴らし、卵焼きを箸で摘まみ口に含む。