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愛しては、ならない
第15章 檻の中の愛②
彼の口付け、抱き締める腕の力、身体を愛撫する長いしなやかな指、甘く低い声、彼の総てに私の何もかもを投げ出したくなる瞬間が幾度もあった。
彼に愛を囁かれる事を、夢見ていた。
私が彼に恋する事だけでもあり得ない事なのに、彼に愛されるなど、もっとあり得ないと、思っていた。
なのに、彼は真っ直ぐな、燃える瞳を私に向けて恋を告げた。
嬉しかった。
本当に嬉しいのに――
彼の胸に飛び込んで行ける訳がない。
剛は、もっと若い素敵な女の子と幸せになるべきなのだ。
(そう、あの清崎さんのような……)
咲きたてのピンクの薔薇を思わせる可憐な彼女の姿が過り、口の奥が苦くなる。
今日は、祐樹は花野と一緒に東京で行われる有名なピアニストのリサイタルへ出掛け、泊まる事になっていて、剛は清崎とデートらしい。
「……デート……か」
私の事を忘れ、他の子を好きになって貰わなくては困るのだし、喜ぶべき事なのに、嫉妬で身体じゅうが潰れそうに痛む。