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愛しては、ならない
第15章 檻の中の愛②



双子を育てるという夢を見て、絵本の中に出てくる哀れな兄弟を幸せにしたいという強い想いを彼女は幼い頃から大人になるまで持ち続けていたから、俺との出会いがあった訳だが、運命の悪戯とは正にこの事ではないだろうか。


俺は、多分最初から彼女に恋していたのだ。


確かに、叶う確率は限りなく低い想いなのだろう。


だが、止められない。


止める方法があるなら、誰か教えて欲しい。



俺の想いが彼女を困らせているのは分かる。


だが、先に俺を見つけ出し、俺に勝手に踏み込み、俺を欲しがったのは彼女の方だ。



俺を、身も心もこんなに乱しておいて、
"錯覚"
だとか、よくも言えたものだ。



恋しい、けれど堪らなく憎たらしい。


思い通りにならないもどかしさと、好意の裏返しの憎い気持ちに火がついて、今朝俺は菊野にわざと言ってやったのだ。



"剛さんは、今日は出掛けるの?"


と彼女が聞くから、俺は――


"晴香とデートです"



と、涼しい顔で言ってやった。
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