この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第15章 檻の中の愛②
俺は清崎を、名前で呼んだ事はないが、敢えて、
"晴香と"と言って菊野の嫉妬を引き出そうとしたのだ。
胸の中にどうしようもない自分への嫌悪が広がったが、彼女の反応を窺い、そして失望する。
菊野は、一瞬目を見開き固まったが、平坦な口調で
"そう……気を付けて行ってらっしゃい"
と言っただけだった。
俺は、頭の中がカアッと熱くなり、怒鳴りたくなる衝動にかられたが、祐樹が居たから踏みとどまった。
もしも二人きりだったら、俺は菊野に何をしたか分からない。
――俺は、何を期待していたのか。
菊野がヤキモチを妬いて、俺に
"行かないで"
とすがってくるとでも思っていたのか?