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愛の儀式/私を調教(おと)してください
第1章 いやらしい女

 男の名は「謙二」。
私の二つ上、今年で三十になる男性だ。
会ったことはない。
名前も年齢も本当かどうかはわからない。
確かな事は、その低い声と冷静な口調から彼が確かに男だということ。

 半年前、六年付き合った彼氏と別れた。
仕事、お酒、ギャンブル────私のことなどまるで無関心。
優しくなるのはセックスの前だけ。
もう我慢できなかった。

 私は12畳ワンルームのマンションに独り暮らし。
週末の夜は長く、そして寂しかった。
なんとなく覗いたアダルトサイト。
SMサイトのチャット掲示板に辿り着き、私はここで「オナニー指示」という言葉を初めて知った。

 最初はチャットだけだった。
それでも、未知の快感に私はのめり込んだ。
どこの誰ともしれぬ男から浴びせされる卑猥な言葉と淫らな指示に、私の下半身は恥ずかしいほど濡れ、何度も何度も自分の指で絶頂を迎えた。
部屋で裸になる解放感、文字で犯される屈辱と快感──────
寂しく長い夜が待ち遠しくてたまらなかった。

 そのうち私は、より細かい地域別のチャットに手をだした。
何かを期待していたわけじゃない────。
もしかしたら私を弄んだ男がすぐ側に……そう考えただけでショーツがしっとりと濡れた。

 謙二はその地域別掲示板にいた。

「電話でしてみないか」

彼の提案を私は拒まなかった。
以来、約一ヶ月─────
私は毎晩十時になると彼に電話をかけ、淫らな時を過ごしている。

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