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第27章 その27

『あ、あの……
助けて下さってありがとうございました……』

女の子は長い黒髪を垂らして深々と頭を下げる。



『いや、
俺の勝手な怒りだから。
こっちこそ口出ししてごめん』


女の子は頭を上げて、
ニコッと笑った。
派手なかわいさじゃないけど……目が細くて笑うと垂れた。


身体もかなり細い。
背も小さくて色白だ。


ほっとして『じゃあ、
これで……』と言った瞬間、
女の子がパタリと倒れた。


『うわっ！』
慌てて支える。

夜道に人は居ない………


『大丈夫？？
ちょっと、ねぇ！』
女の子は顔が真っ青で、
頬を叩いてみたがはーはーと息が荒い。


『え、えっと……
どーしよう………』
スマホを取り出して〔母〕をコールした。
『夜勤だったなぁ…出るかな』

遊の母は、看護師をしている。

シングルマザーで育ててくれた。
大学病院の正看護師・婦長をしている。

『もしぃ？遊どしたー？』応答があった。


『あ、母さん？
あのさ、女の子が倒れてて……顔色が真っ青ではーはー息が荒いんだ』


『え？
あんた今日コンサートじゃなかったの？』

『帰りにちょっと話した子が居てさ。
急にフラッと倒れちゃった』