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本日もエロ日和なり
第28章 その28
夕方6時。事務所に行き、タイムカードを押す。

『おつかれさまでしたー』
挨拶をして運送会社を後にした。


自転車で15分のアパートに帰る。
『お?
今から仕事っすか』


共用玄関から崎田【さきた】さんが出てきた。

崎田さんは42歳。
リュックを背負って自転車に股がり、
『はい。行ってきますね』と漕いでいく。


崎田さんは誰に対しても敬語。

仕事は何をしているのか不明だけど、
毎日この時間にああやって出ていく。



(災害があったら絶対潰れるよな、
このアパートって…)


木造2階建てのアパートを見上げて思う。

今にも倒れそうだ。



秋は1階の奥にある103号室の鍵を開けた。

和室の6畳間が2つ。


共用キッチン・風呂・トイレは玄関を入って右手にある。
共用は煩わしさがあるものの、ルールさえ守れば楽だった。


6畳間にリュックを投げて寝転んだ。

『あ〜〜〜肩いてぇ…』



警備バイトは夜11時からだ。それまて眠ろうと思って目を閉じた。


♪〜〜〜♪♪〜〜〜♪〜


…………隣の部屋からアコースティックギターの音がする。

閉じていた目を薄く開いた。
『佐竹【さたけ】くんか……』


27、8歳の佐竹くんという隣室の住人は、
ストレスが溜まると歌い始めるという癖がある。


気にならない時もあったけれど、
睡眠が取れずに申し出ると『せめてギターはダメかな…』と提案をされた。
バンドでもすりゃいいのに「それは怖くて無理」らしい。

慣れると気にならないものである。


アコギの引っ掛かるような音が子守唄のようだ。
秋は直ぐ眠りに堕ちた。


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