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お願い、俺を選んで。
第2章 予感



無意識に、また、目をそらしていた。


「そっか。じゃあ先に行くね!色々ありがとう」


声を弾ませて、彼女はカツカツとヒールの音を鳴らして俺の前を通り過ぎていく。


返事は、しなかった。できなかった。たった数分、だけど俺の人生では例がない出来事で、どうやって話せばいいのかまるでわからなかったし、実際どうやって会話したのか、緊張して覚えていなかった。


カツカツカツ...カッ...


まだ近くで、ヒールの音が止んだ。


俺は、目を向けなかった。


数秒の沈黙。


「....せ...ぁぃ...」


「...ん?」


なんだ?何か聞こえた気が...


「あたしっ!長谷部愛理!」


確かに、そう聞こえた。俺への自己紹介と理解するのに、十数秒はかかってしまった。気付いて顔を上げた時には、彼女は再び歩きだしていた。


俺はとっさに立ち上がって、


「山下...山下惠太っ!!!」


そう叫んでいた。


彼女は俺の声に驚いたのか、肩を震わせたように見えた。そして振り向いて、さっきと同じように笑って手を振った。


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