この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ドアの隙間
第3章 孤独な人
夫は昨晩から二泊分の荷物を小さなキャリーバッグに詰め込み、準備万端で朝を迎えた。
「あなた、これ、私が初めて作ったのよ」
我ながら上手く仕上がったマフラーを夫に手渡した。
「おぉ、すごいね、ありがとう。大事にするよ」
食事を始めた夫は手を休めて、マフラーを首に巻いて見せた。
「どう?」
義母と毛糸を買いに行き、一緒に選んだの色はオフホワイトだった。
「よく似合うわ。素敵よ。」
「おぉ、上手く出来たね。いいじゃないか」
義父も声をかけてくれた。
「細かいところまで見ないでくださいね。遠くから見るのがおすすめです」
「あはは、そうしよう」
「あ、そろそろ時間だ」
夫は急いで食事をすませ席を立った。そして私がコーヒーを置いて立ち上がる間もなく、「いってきます」と言って慌ただしく出て行った。
「何を急いでいるんだあいつは、いつもより早いじゃないか」
「ほんと、遠足前の子供みたいですよね、ふふっ。あ、お義父さんもマフラーした方がいいですよ、今日も寒いみたいですから」
「あぁ、そうだね」
義父は部屋に戻ってマフラーを持ってきた。
「奈津美さん。今日は6時半でいいかな?」
「はい、お義父さんの会社の前で待ってます」
「わかった。去年と同じレストランを予約したんだけど」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあそろそろ出掛けるよ」
義父は玄関に向かい、私も後に続いた。
「あ、悟史のやつばかだな、マフラーを忘れてる」
「えぇっ?」
靴箱の上に、今日の為に仕上げたマフラーが置いてあった。
「まったく……」
「まったく誰の子どもかしら…」
「うん、親の顔が見てみたいね」
「あは、あははは…」
二人で笑い合った。
「では、6時半に」
「はい」
「いってきます」
「いってらっしゃいお義父さん」
義父は うん と頷いて家を後にした。
私は忘れられたマフラーを手に取った。
やっと仕上げたのに。
悟史のばか、風邪引いたらどうするの?
もう、知らない!
「あなた、これ、私が初めて作ったのよ」
我ながら上手く仕上がったマフラーを夫に手渡した。
「おぉ、すごいね、ありがとう。大事にするよ」
食事を始めた夫は手を休めて、マフラーを首に巻いて見せた。
「どう?」
義母と毛糸を買いに行き、一緒に選んだの色はオフホワイトだった。
「よく似合うわ。素敵よ。」
「おぉ、上手く出来たね。いいじゃないか」
義父も声をかけてくれた。
「細かいところまで見ないでくださいね。遠くから見るのがおすすめです」
「あはは、そうしよう」
「あ、そろそろ時間だ」
夫は急いで食事をすませ席を立った。そして私がコーヒーを置いて立ち上がる間もなく、「いってきます」と言って慌ただしく出て行った。
「何を急いでいるんだあいつは、いつもより早いじゃないか」
「ほんと、遠足前の子供みたいですよね、ふふっ。あ、お義父さんもマフラーした方がいいですよ、今日も寒いみたいですから」
「あぁ、そうだね」
義父は部屋に戻ってマフラーを持ってきた。
「奈津美さん。今日は6時半でいいかな?」
「はい、お義父さんの会社の前で待ってます」
「わかった。去年と同じレストランを予約したんだけど」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあそろそろ出掛けるよ」
義父は玄関に向かい、私も後に続いた。
「あ、悟史のやつばかだな、マフラーを忘れてる」
「えぇっ?」
靴箱の上に、今日の為に仕上げたマフラーが置いてあった。
「まったく……」
「まったく誰の子どもかしら…」
「うん、親の顔が見てみたいね」
「あは、あははは…」
二人で笑い合った。
「では、6時半に」
「はい」
「いってきます」
「いってらっしゃいお義父さん」
義父は うん と頷いて家を後にした。
私は忘れられたマフラーを手に取った。
やっと仕上げたのに。
悟史のばか、風邪引いたらどうするの?
もう、知らない!