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私は犬
第17章 契約
一緒にベッドに潜りこむと、後ろから首の下に腕が滑り込んできて。ああ。これが剛ちゃんが焦がれて止まない腕まくらかと。そう思った。

ベッド横のチェストの上にある写真たちを、じっと見ているので、写真について簡単に説明してあげた。誰かと寝るのって気持ちがいいわ…………。とてもホッとする……。これなら隣に居てくれても悪くないわ。

・・・・・・・・・・・・・・

ああ。これは夢ね。おば様のお顔が今よりお若いもの。お髪も長いわ。ここはレマン湖ね…。週末は寄宿舎からお家に帰れるのだけれど、お母さまが来ないからあまり帰れなくて。時々こうしておば様がみえて、沢山遊んでくださった。

2人で手を繋ぎながら坂道をいっぱい歩いて、チョコのアイスを買って頂いて。湖まで白鳥に餌をあげにきたのよ…。

『真子ちゃん、見て!』

『あ!お舟だわ。あれはどこに行くの?』

『お隣のフランスのエビアンという所。朝、お水を頂いたでしょう?あのお水はそこから運ばれてくるのよ。』

『さぁ、いらっしゃい。これをね、白鳥さんにあげてごらんなさい。』

『なあに?これ?』

『白鳥さんのお煎餅よ。ほら、こうやって…。』

『あら…………。白鳥さん、ちっとも来ないわね。お腹がいっぱいなのかしら??』

『白鳥さん、みんな怖いお顔しているわ。何で怒っているの?』

『きゃあああああっ。噛まないでっ。あなたのお煎餅はおば様がお持ちよ。私は食べ物じゃないのよっ。やめて!』

『真子ちゃん、逃げるわよっ。早くっ、こっちにっ!!』

『ハァハァ。あんなにたくさんの白鳥に囲まれて、怖かったわね。お怪我してない?』

『はぁはぁはぁ…。大丈夫よ……。何で噛むの?どうして?』

『分からないわ。でも、もう白鳥さんに近寄っては駄目よ。お約束してちょうだい。』

『どうして?あんなに綺麗なのに?』
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