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私は犬
第21章 赤い紐*
金曜日

退勤後、主治医でもある真知子先生と食事の約束をしているホテルへ向かった。

ご婚約なさったそうで、お相手の方は同じお医者様で、大学病院にお勤めなのだとか。いつか私にも紹介してくれると約束してくれいて、今日は3人でお食事。

真知子先生はおば様の同級生のお嬢さん。だから、とても良くして下さる。

約束の時間まで、まだ間があるけれど、お茶でも飲みながら待てばいいわ。剛ちゃんが変身させてくれたから眼鏡をかけてない。お洋服も、いつもとは違う。『久し振りに腕が鳴るわ!』って言いながら、張り切っていたから、注意して聞いてたのだけれど、ちっとも腕なんか鳴らなかった。なんで?

そういえば、この間の母の日に、おば様にお贈りした枕。お気に召されたかしら?高い枕がお好みらしいから毎年枕にしようと思う。

次は誰がお誕生日だったかしら?こういうの、嫌いじゃないけれど、選ぶのはちょっと大変ね。

手帳を見ながらあれこれ考えていると、キツイ香水の匂いがしてきた。気持ち悪い…。なんでこんなに香水つけるのよ。鼻が壊れそうだわ。

臭いの主を探そうと、周囲に目を馳せると。横の鏡壁の中に音羽さんの姿があった………。

華やかで臭い女性と一緒に……。私の後ろを通りすぎて行く様子が真横の鏡壁に写っている……。女性は、音羽さんの腕にぶら下がるように腕を絡ませて…。というか、あの女性、公園の猫の人だわ…。

見なきゃ良かった……。ずっと下を向いていれば良かった……。あの女性が臭くなかったら、見ないで済んだのに………。香水つけすぎなのよ…。少しは周りの迷惑を考えてよ…。貴女の香水のせいで私………。
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