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私は犬
第21章 赤い紐*
「そろそろ帰った方がいいと思うわ。もう、ここに居る必要はないでしょう?」

「は?」

「自分の家に帰りなさい。と言っているの?分からない?」

「だーかーらー。」

あああっ。もうっ!全部言わなきゃ分からないのっ?どこまで低脳なのよっっ!

「女性がお待ちなんじゃない?だから帰って。ごきげんよう。」

「はぁぁ〜っっ。ちょっと来いっ。」

腕を強く引っ張られて、連れ出された。ちょっとやめてよっ、靴が片方脱げたじゃないっ!

音羽さんは自宅の玄関を開けて、私をずんずん中へ引っ張ってゆく。真っ暗なリビングの扉を開けて真っ先に飛び込んで来た風景は、一面に広がる夜景の海だった…。

「なにこれ…。」なんて孤独な部屋なんだろう…。そう言いたいのに言葉にならない。

「ここ、角部屋だろ?だから東から南に続き窓があるんだ。ここまで全部窓だと、落ち着かねえよな…。」

うん。落ち着かないね。寂しくなっちゃうね。自分が独りぽっちに思えて…。押し潰されちゃうね…。

「で、何処に女がいるって?」

あっ。そう言えば…。誰もいないんですけど?

「ほら、家ん中全部確かめろ。こい。」

そう言われて、家中をつれ回された。どこにも誰も居ないわ…。クローゼットも男物の服ばかり。シューズクロークもそう。無駄にベッドが大きいのね…。5人は寝れるわよ、アレ。なんか音羽さんみたい。無駄に偉そう。

「せっかくだから、飲むか…。」

そう言って、音羽さんはお酒を用意するために席を離れた…。
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